やはり新型キャンターを語る時、いの一番にあげなければならないのは、三菱ふそうが「革新のパワートレーン」と銘打つ新開発3リッターエンジン「4P10」と同じく新開発のデュアルクラッチ方式の自動変速トランスミッション「DUONIC」だろう。
4P10は、FPT(フィアット・パワートレーン・テクノロジーズ)社と共同開発した直列4気筒ターボインタークーラエンジンで、そのベースとなる「F1C」は、すでに数年前からイヴェコなど商用車に搭載されており、信頼性の高い実績のあるエンジンだ。このエンジンに再生制御DPFと尿素SCRを組み合わせたブルーテックシステムを搭載することにより、ポスト新長期排ガス規制をクリアしている。ちなみにライバルとなる国内メーカーは、おそらく小型トラックには尿素SCRシステムは採用してこないとみられるが、私の質問に対し開発本部長のアイケ・ブーム副社長は、燃料経済性など尿素SCRシステムのメリットを強調。小型トラックではアドブルーの補給も年に数回程度で済むため、むしろ尿素SCRシステムを選択しない方がおかしいと、なかなか挑発的な(?)コメントを返してくれた。
また、トラック向けとしては世界初となるデュアルクラッチ式トランスミッション「DUONIC」は、伝達効率を極限まで高めた6速の自動トランスミッションで、こちらは三菱ふそうの独自開発。最大の特徴は、ショックや駆動力の抜けのない、スムーズでシームレスな変速で、2ペダルのイージードライブと相まって、安全運転にも寄与するもの。しかもクリープ走行も可能だ。
驚くのは、この「DUONIC」を標準搭載扱いとしたことで、従来のマニュアルミッション車(遅れて発売)と立場が逆転、「DUONIC」搭載車が大半を占める販売計画を描いている。約15万円高となるので、「勝算ありやなしや」を国内販売本部長の谷山義隆副社長に尋ねたところ、「DUONIC」は、高性能な4P10エンジンやブルーテックシステムと相まって、燃費性能の向上効果が高い。また、今や乗用車の大半がATなのに、小型トラックがいつまでもМTのままでいていいとは思わない。運転がしやすく安全運転に寄与することからも、きっとご満足いただけるものと確信しているとのこと。いずれにせよ、新型キャンターが三菱ふそう渾身の1台であることは間違いないだろう。
ところで、キャップが三菱ふそうのトップとの記者会見に出ている頃、うちの若手は、屋外会場でいそいそと新型キャンターに乗り込んでいた。次項では、そのインプレッションを聞いてやって欲しい。