今朝ほど東京都市大学の世田谷キャンパスで「水素ハイブリッドトラック」の発表があった。東京都市大学といってもピンと来ない向きもあるかもしれないが、2009年4月に改称する前の校名を聞けば、「ああ、あの大学!」と合点がいく人も多いはず。そう東京都市大学の前身は、1970年に初めて水素エンジンの運転に成功して以来、日本の水素自動車の研究開発をリードし続けてきた武蔵工業大学である。
武蔵工業大学といえば、キャップも1994年、箱根ターンパイクで行なわれた日野レンジャーベースの水素エンジントラック「武蔵9号」の登坂走行試験を取材したことがあり、液化水素の潜熱を利用して冷凍車に仕立てられた「武蔵9号」には興味を覚えたものである。
当時、武蔵工業大学の水素自動車の研究開発を牽引していたのが自動車業界でもよく知られる故・古浜庄一教授である(後に同大学の学長)。古浜氏の物故もあって一旦は途切れがちとなった同大学の水素自動車の研究開発だが、古浜教授の遺志を継ぎ、今回水素ハイブリッドトラックを完成させたのが愛弟子の伊東明美准教授(総合研究所自動車研究室)である。
伊東准教授によれば、環境にやさしい水素燃料エンジンは、特にトラックやバスなどの商用車での実用化が期待できる代替機関であり、今回開発した水素ハイブリッドトラックも、ディーゼルトラックとほぼ同等の動力性能を有し、宅配便や資源回収車等の幅広い用途に使用が可能だという。東京都市大学では、昨年4月に水素燃料エンジン搭載バスを開発しているが、このバスによる実証試験などにより明らかになった分析結果や課題をさらに煮詰めて、その結果、水素エンジンとモーターを動力源とする水素ハイブリッドトラックが誕生したもの。
水素エンジンバスからの主な改良点は、(1)トルク不足が感じられた低速域を、ハイブリッドシステムのモーターによるアシストで解消。(2)従来のトランジスタ式点火方式+対策ケーブルに替え、CDI方式を採用。バックファイアを抑制し、高回転時の出力をより向上させると共に、対策ケーブルを不要とすることで点火系の耐久性を大幅に向上……の大略2点である。
なおベース車両は、日野デュトロハイブリッドで、ハイブリッドシステム自体はベース車両を踏襲。最高出力127PS、最大トルク34.4kg・mで、最大積載量は2000kg。現在キャブバックに水素タンクを4本搭載しており、その場合の航続距離は約100kmだという。
もちろん、水素を供給するインフラの問題をはじめ、重量増(排ガス後処理装置レスなどのプラスマイナスで200から250kgの増加と見られる)やキャブバックの荷台スペースの減少など、実用面ではシビアな課題も多々あるが、再び研究開発が加速し始めた水素自動車、しかもハイブリッドとのコラボレーションという取り組みは、大いに注目されるところだ。